伴名練が編集した『日本SFの臨界点』アンソロジー三冊を読み終えて、むしろ彼の書いた小説を読みたくなって『なめらかな世界と、その敵』を再読していた。表題作と『ひかりより速く、ゆるやかに』は随所にSF的想像力が散りばめられていて、アンソロジー各部巻末の長大な解説と相まってSFをいっぱい読んできたんだなぁというのが感じられた。アンソロジーの解説に『ひかりより速く、ゆるやかに』は中井紀夫の『暴走バス』、『ゼロ年代の臨界点』は石黒達也の作風が元ネタとあった。そうした背景を踏まえて再読できたのも良かった。『ひかりより速く、ゆるやかに』で叔父の蔵書に『山手線のあやとり娘』があったと書かれているけど、これも中井紀夫の短編集のタイトルらしく仕込みが細かいなぁと思った。