安野貴博『サーキット・スイッチャー』読んだ。第9回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。
非常に構成の優れたSFサスペンス/ミステリーだった。登場人物や設定のすべてに無駄がなくて感動してしまった。
自動運転が普及した世界で交通事故が不可避的に発生するとき、アルゴリズムによって命の選別が行われることになる。こうしたトロッコ問題的状況をテーマにして技術と人命、確率と運命、そしてこうした技術を利用した社会の在り方といった問題が描かれていく。問題の扱い方や物語への落とし込み方も上手いし、描かれる社会像も非常に面白かった。とても新人作家とは思えない出来栄え。読み終えてから改めてタイトルをみて膝を打つ仕掛けも見事。
作者が現役プログラマーなのでソフトエンジニアリング用語がもりもり出てくる。同業を始めてからそうした用語をすらすら理解できるようになったのは利点だと思う。この本以外でもこうした場面がたまにあるのでSF読みとソフトウェアエンジニアはシナジーがある。