再上映されていた『さよならの朝に約束の花をかざろう』を観た。
この映画はまず尋常でなく背景に力が入っていて、通常ではあり得ないほど遠景まで書き込まれた背景美術と凝ったライティングが見たことのないような奥行きを生み出している。映画館の環境でそれを見られて良かった。例えば王宮のシーンでは滑らかな石の床に窓の形の光が落ちていて、床の微細な歪みに合わせてその光の形も歪んでいる。3Dグラフィックでのレイトレーシングのような描写が行われている。
レイリアは(意に沿わぬ形で)設けた娘を忘れて生きていくことを選ぶ。ここで示されるのは愛することが義務ではないということではないかと思う。エリアルを看取ったマキアの「愛してよかった」というセリフで映画は締め括られる。「愛してよかった」のは、裏を返せば「愛さなくてもよかった」からだ。愛することが義務ではなく、選び取る行為だから「愛してよかった」と言える。その愛が親のいなかったマキアから生み出されることに、人の持つ愛情の奥深さと力強さがあるのだと思う。