冲方丁『マルドゥック・アノニマス 7』を読んだ。
『スクランブル』『ヴェロシティ』が各三冊だったのでその合計冊数を超えているし、まだまだ続きそうだった。物語は長ければ長いほどいいと思っているので嬉しい。
法学徒になったバロットの語るところの「公正」/「平等」と、ハンターの言う「均一化」の関係が面白かった。
公平とは、機会を等しくすることであり、そのためには、結果を厳格にしなければならない。平等とは、結果を等しくすることであり、そのためには、機会を厳格にしなければならない。
公平は選挙やスポーツ、平等は福祉や公共施設に例えられている。いずれか片方のみを追求してしまうと社会は成立しなくなる。
ハンターの「均一化」は平等のみを追求する思想なのであった。自身よりも恵まれている人間から奪い取り、自分のものとすることで平等を実現する。しかしながらそれは公平ではない。
危機にある人間にエンハンスメントを施す09法案は公平ではあるが、平等ではない。限られた人間にしか力を与えないからだ。
7巻目にして法の外側で平等という一面的な正義を追求するハンターと、法学徒としてバランスの取れた正義の追い求めるバロットの視座の違いが明示されて面白くなってきた。